創業10年、研修生を卒業された若手社長。自社は社長とクラークの2人で効率の良い仕事をされていました。昨今の組織化や獲得保険料1億円以上を目指す戦略を機に、保険会社からの協力もあって老舗の代理店を紹介されてM&Aで吸収。相手先の代表者は退かれるという条件で営業社員3名とクラーク1名を社員に向かい入れました。経営に対する理念や研修を行いコミュニケーションの構築に努力しましたが売上は微増、最近は新しい保険商品も販売せずに同条件での契約が続いています。生命保険の契約があれば給料も増えるので、現状で良いと思っている社員の雰囲気も気になり、第三者機関として営業を見て欲しい、他の代理店の営業のやり方も教えて欲しい、との依頼をいただきました。
こちらは当初オンラインでのスポットコンサルティングを希望されて実施。先ずは現状のお話を1時間ほどお聞きしました。「M&A前の業績は聞いていたので同等の手数料が入りながら、営業成績を上げて行けば良いと思っていた。」とのこと。2人のときはクラークもよく働いてくれて効率が良く利益率も良かったがM&A後の利益率は下がっている様子。生命保険で契約した臨時収入が定期的に入れば安定するものの、本業の損保経営に不安を感じていらっしゃるとのこと。
M&Aで大切なことは買収先のデューデリジェンスです。対象代理店の規模や手数料収入を調査することも必要ですが、買収後のリスク想定が甘いとこのような結果を招いてしまいます。M&Aとは本来お互いが成長して利益を大きくするために行うもので、それが実現しなければしない方が安全です。リスクの回避の分野で「何もしない」ということが成長を妨げない得策だからです。
お話を聞いた段階で容易に原因が推測できました。もともと買収先の代理店さんは損保
だけの売上高が2,500万円前後、経営者と営業社員3名、クラーク1名で換算するとひとり頭の売上責任額は500万円です。社長の契約者は3名の社員に振り分けていますし、クラークは営業していませんので、実質売上をつくっている社員は3名です。ざっと、獲得保険料は1億円か1千万円をプラスするあたりで、ひとりの営業マンで更新責任額は4,000万円と想定できます。
バミューダトライアングルの4,000万円が一番厄介
4,000万円という数字を毎年更新しながら新規営業をするという社員のスタイルが一番厄介です。毎日事故の対応をしながら更新作業を行わないといけないので、そこそこ忙しい作業になりますが、かと言って人にやってもらうには中途半場な数字ですので、結局はクラークの力を借りずにできてしまいます。仕事をしているようで頑張っていないゾーン、バミューダトライアングルの4,000万円のゾーンで忙しいけど数字が上がらない、働き方が見えなくなって迷子になる領域です。担当している営業マンも営業に対するプライドが高くや口も達者です。おそらくクラークは電話対応や簡単な見積印刷、雑多な仕事に追われていると感じます。
SSLSTの導入で営業を体系化する仕組みをつくる
先ずは営業のやり方を変えることを第一番目のコンサルティングとしてお引き受けしました。一番肝になる安定的に利益を出す現業が不安定であれば修復する必要があります。既に保険に携わっていらっしゃるので営業のトークは次の段階として、営業の行動を標準化して仕組みにする必要があります。それぞれが思い思いの動き方を止めて、何故その動きをするのかという目的と動きの仕組みをつくっていきます。同時にSSLSTの営業行動を記録する日報も提供していきます。この日報は驚くような効果を発揮してくれます。「今日は〇〇会社に訪問したが社長は不在だったので来週訪問することにした」というテキストはNGになりますので、社長は同行をしなくてもSSLST日報を見るだけで、社員の1日の営業行動を読み取れるような仕組みを構築していきます。
コンサルティングを開始して6ヶ月で社員の動きが変わる
SSLST営業は社員に共通言語を構築することができます。
「今どこのS?」
「はい、ソリューションのSです」
「じゃあ、次回はTだな。Sを入れた見積書はできている?」
と言う感じです。共通する動きと考え方を構築することで無駄な動きや自分勝手な行動を抑制して、効率化という機能がはじめて生まれてきます。営業とクラークが一体となった仕組みを構築することで会社は利益率を向上させることができます。利益率が上がれば社員の給料も良くなる、循環する仕組みの機能を構築することが経営者の役目です。損保営業の動きが変われば生保の契約も計画を持って獲得できるようになりましたので売上は前年同月で20%向上しました。生保の契約は利益率を向上させてくれるひとつのきっかけになります。現在も損保での利益率を上げるコンサルティングを引き続き導入していただいていますので、3億円の壁を打ち破る日もそう遠くないことでしょう。
営業のやり方を改善して利益率を向上させるコンサルティングの事例です。