【第1話】類似する商品販売、価格から脱却する考え方

ボールペンとノート
髙橋 満 セミナー風景

「商品が高くて売れないですよ」

「せめて他の会社みたいな価格であれば営業ができます」

「もっと性能の良い商品を出してくれるようにメーカーに言ってください」

メーカーから商品を提供される販売代理店の営業社員、性能や価格が一律、定形型の商品やサービスの業界に携わっている社員から聞かされる声に、あれやこれやと巧みな話術で必死にかわしながら説得していた社長から相談を受けました。

「髙橋さんの会社って、どうやっていますか、他の保険代理店とは何か違う動きに見えるので教えて欲しい」

法人向けの経営保険を専門に労働災害の訴訟、M&Aや海外進出へのリスクヘッジなどを手掛けて、損害保険の業界で20年以上に渡り保険営業をしている我が社に、同じ業界から相談を受けることも多くあります。

保険に携わる業界人は驚くほど多く、それぞれが商品の強みに自らの卓説した話術を絡ませて営業を行います。商品だけで言うならば多少の優劣があり、価格の違いもありますが今の時代、極端な差もないことも事実です。時代とともに生まれる新商品をいち早くお客様に提供して、誰からも聞いたことがない情報を語ることで、自らを売り込むことに成功すれば営業数字を伸ばすこともできます。翌年になると情報は誰もが知ることとになり、一般化による価格競争が生まれ、数年で販売成績も下降し顧客離れの要因をもたらす結果となります。販売するものにとっては非常に不安定な環境と言って良いでしょう。

販売代理店、定形型の商品やサービス、性能や価格に大きな差がない会社にとって、経営者は何を目的とする営業方針で、営業社員にはどのような販売の仕組みを提供していくのかを、きちんと社員に伝えておく必要があります。経験が浅く、営業に不慣れな人ほど、商品自体の強みや性能を武器する姿勢が全面に現れ、相手の想定した価格に合致すれば契約ができきるというスタイルになりがちです。数年も経てば契約も取れるようになり、営業トークや世間話もできるようになっていきますので、ある一定の価格帯に存在する顧客層には販売できるようになるはずです。その顧客層を獲得するために「商品売り」を中心に販売してきたとすれば、価格競争帯で販売する層を自らが作りだした結果とも言えます。

「商品の性能や価格は大事」、これは普遍的な要因ですので避けて通ることができない物事であると同時に、多くの営業社員が存在する世界です。その中で結果を出していくことは並大抵のことではありません。ましてや経験が少ないものにとっては挫折の世界にしか見えなくなってしまいます。

特に販売代理店や委託商品販売業では、「商品の性能・特性・価格・うまみ」は全てメーカーに委ねられていますので、どうあがいてもどうすることもできない領域です。その領域にメーカーと同じ目線ややり方ではいつしか限界がきます。「メーカーの商品を売る」という限界です。いつまで経っても他人の商品に変わりがない訳ですから、会社が持つべき独自のノウハウである、「やり方・コツ・秘訣・技術・知識」が蓄積されることにも限界が生じてしまいます。

「価格から脱却するとは、経営者は自社しかないやり方や独自の考え方を決定させて、会社を売り込む営業基礎の土台を作ること。その上で商品の性能や価値を合体させて、目標を達成していく」ということが重要になります。会社が主役であり、商品は脇役であるための仕組みを作ることが大切です。

冒頭でおっしゃっていた「違う動き」とは、何処を見て何をしていくかの動き方です。

・お客様の今を知ること

・何が欲しいのか、何を解決して欲しいのか、何かの気づきを添えて整理してあげる

・会社の強みを一緒に考える

・コンサルティングの設計書を作って、社員に落とし込む教育を実施する

・営業の実践を一緒にやる

・強みを継続的に稼働させるために、保険でリスクをヘッジする

・仕事のリスクに応じた保険の活用を提案することで価格競争帯に行きにくい

類似する商品が有り触れている世の中では、自社のストーリーとお客様のストーリーをぶつけていく時代です。営業というバッターボックスに立って、共感されるのか異なった方向性だったのか二者択一です。商品という他人ごとの武器ではなく、自社の持つ武器でアプローチすることが大切です。全てが自分事として相手を見ることができれば、商品ありきの目線に陥ることもありません。10打席で3打席のヒットが出せる三割バッターの強打者を育てるには、自社の持つ強みを引っ張り上げて、社員に根付かせるための仕組みを作ることが必要です。第三者のコンサルティングは会社の良い点、悪い点、見えていないこと、人材のレベルなど、妥協しない率直な意見を聞くことができます。厳しい意見である一方で気づきが早ければ、切り替えしや立ち上がりも比例して早くなります。第三者機関としてコンサルタントを活用する時代、託す経営が広がっているのではないでしょうか。