【第2話】「何故?」を追求する好奇心が探求への入り口

ボールペンとノート
髙橋 満

島根県の出雲市には日御碕灯台の近くに日御碕神社があります。大きな神社には稲荷神社が別に祀られていることもある、この神社も山手にお稲荷さんがあります。御狐さんは神社ごとに違いますので、狐の表情や形を楽しむだけで結構な時間を使ったりします。何なら頭やお尻、尻尾まで触ってご利益を得ようとします。決して肌触りが良くはありませんが、自分への暗示みたいなもんですから、触るだけ触っておけば安心も倍増します。阿吽の狛犬のように御狐さんも左右が違う口元をしていることが多く、ここも何かを口に咥えているようです。咥えている品物は色々あるようで、巻物から玉、稲作、鍵、鎌、など色々ありますが、ここの御狐さんは何を咥えているのかよく分かりません。巻物のような、玉のような、鈴のような。あれこれ見回しても答えは見つからず、仕事の合間ということもあって時間切れとなりました。

子供は質問攻めにする天才です。見たものが何かを知りたくて素直に口に出します。私はこの時期が大人になった時の感性に大きく関わっていると考えています。子供はしつこくて、あたり構わず口を開くものです。理解して分かるまで質問をしてきます。オモチャを欲しがる気持ちと一緒で、分からないを手に入れたいと思っていますから素直に言葉に出しただけです。

大人には大人の事情があります。聞かれても良いタイミングと今聞かれたら都合が悪い、忙しいと思っているタイミングがあります。全く悪気が無い感情が不安定なタイミングで質問されるとめんどくさい言葉を言ってしまいます。子供の感性が将来左右されると思うと大人の役割はとても大切ですね。

子供が理解して分かるように伝えるためには、大人の方にも話すためのコツと心の余裕がいります。出来るだけ言葉は分かりやすく、横文字英語やカタカナはご法度で、ひらがな文字で伝えます。「例えばね・・・」を使ってそれぞれの意味と捉え方を伝えることが大切です。子供が「そうなんだ〜」と何となく理解できればそれでオッケーですが子供はしつこいものです。

「だったら○○は何?」

先ほど言ったことと違う角度から、全く別次元の物事に対して質問がきます。変わったことを言うな〜、と大人は思っていますが子供の頭の中では何かと繋がっていて、次のステージに行くための質問をしてきただけです。その360度から来る質問に大人は耐えて答える必要があります。

質問して良いという安心感は、連想や想像をどんどん広げて行きます。どんな質問でも、どんなタイミングでも、どんな時間帯でも答えが返ってくると、習得したい覚えたいと脳が育ち、疑問を持つこと、自分で理解すること、そして未来を想定して、未来の結果を読み解く力が子供の頃から養うことができます。

大人にも分からないこともありますし、今は質問して来ないで、と言うタイミングもあります。なんせ大人は忙しいです。共働きだったらもっと忙しいです。子供の話を聞いてやりたいけど、目の前の現実と戦わなければなりません。子供の方から見れば忙しい大人に質問してもスッキリしないし、聞くと機嫌が悪いから次の時に聞こうと思うはず。でも次が訪れるとは限りません。大人に質問したら今日は優しいけど明日は不機嫌、いつだったら良いのかと思いながらも、大人と上手く付き合っていきたいと子供も感じていますので、発送しても口に出す回数は減りますのでひらめく質問回数もグッと落ちてきます。

「何故?どうして?」

を奪う行為はリスクマネジメントの強敵です。何故と言う興味が生まれなければ未来を上手くやって行こう!と言う前向きな考え方が生まれにくいからです。仮のストーリーを決めて想定や妄想をして、成功する姿をイメージすることが大事だからです。仕事にもプライベートにも、子育てにも全てにおいても必要だからです。

山奥で育った私には近所に友達はおらず、幼い時は母親といつも一緒でした。時代は東京オリンピック、高度経済成長がまだまだ続いていましたが、田舎は至ってスローでゆっくり時間は過ぎています。田んぼや畑仕事で精を出す母親の側で、あれやこれやと見たものや手にしたものを質問攻めにします。母親は決して優秀ではありませんでしたが、自分なりの妄想を言葉で話してくれました。

決して、

「忙しいから後にして」

は言いませんでした。大人になって母親の言葉を思い出すと結構な感じでいい加減だったり、理屈に合わなかったり、妄想癖があったと思いますが、私それを信じていましたしその話を聞いて幸せでした。

リスクマネジメントは何故?どうして?ちょっと変だ、理屈に合わん、そりゃいけんだろう、から始まります。幼い頃に培った想定や妄想癖が、リスクマネジメントをやりたいと思ったきっかけだと最近感じています。想定や妄想をするだけなら、誰も傷つくこともありませんし、お金も掛かりません。仕事にもプライベートにも役立つ思考の想定論で成功を導く考え方です。

世の中にある難しいリスクマネジメントも大切です。優しいリスクマネジメントもあります。大人になっても、「何故?」の気持ちを持つことを忘れてはいけません。幼い時に感じた、学ぶ楽しさ、覚えるワクワク感があったことを忘れることは勿体無いですね。